貧乏エンジニア漫遊記

大手造船会社エンジニアが世界を股に掛けた、面白奮闘記です!

15.マレーシア編(2)

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マレーシア編(二)

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ポートクランの沖にプラオカタムと呼ばれる島がある。
プラオは島、カタムは蟹を意味する。広さは小豆島の隣の豊島ほど。満潮時には水没する。 全島がマングローブに覆われており、満潮時には樹葉部のみ水上に残る。 土は水面下になるのだが、空から見ると立派な島に見える。ここによく釣りに行った。

日曜日の朝7時頃、島嶼を巡る生活用定期船に乗り込む。ハシケが何艘も待機しており、各々のハシケの呼び込み屋が声をかけてくる。このハシケの漕ぎ方が面白い。漕ぎ手は船首に向かって立つ。左右2本の櫂を、片方ずつ漕ぐのだ。定期船は二百人乗り、おびただしい量の生活雑貨を積んでいる。これがマングローブ密林内の大小の水路をぬっていく。水上生活者の部落がいくつもあり、各々に桟橋がある。遠浅なので、これが非常に長い。大きな部落には、雑貨屋、八百屋、ミニ発電所、人家、食堂、広場があり、これら全てが木杭の上に載って建っている。どの家の床下も、日に2度は海水がくる。トイレは厠式だ。飲料水は雨水のみ。各家の樋は太く長い。屋根の上の雨は一滴残らずドラム缶に集められる。ここの住人は全て中国系。広東州、福建州あるいは潮州からきた漂海民らしい。

さて、ここでの釣りは簡単で豪快だ。 餌はブラックタイガー。それを釣り針につけて、幅約50メートルの水路の真ん中にボッチャンと放り込む。 しばらくすると大型の投込竿がグンニャリ曲がる。獲物はほとんどが海ナマズ。香川県でギーギーと呼ぶ魚に似ている。 大きい奴は長さ70センチ、直径15センチほど。照り焼きにしたら結構いける。 鯛もイサキも釣れるが、色は薄く味も落ちる  釣りに飽いたら昼飯だ。来る度に顔をだすので、食堂のオヤジとはすっかり仲良くなった。オヤジの最も得意な料理は「清蒸薫魚」だ。レシピは文末に記す通り。これと野菜の唐辛子炒めが定番だ。野菜は日本だったら捨ててしまう代物。しかしここは海上、どんな野菜でもご馳走なのだ。加えてビール。それだけでどんなストレスも吹っ飛ぶ。

昼飯が済むと、島の奥へ探検だ。 板張りの道は島の奥に向かって2キロほどある。道幅は、最初は2メートル、最後は30センチ程になる。 どの家もすこぶる開放的だ。窓も戸も開け放し。家の中には、必ず両親と祖父母の額がかかっている。 祭壇があり、直系7ミリほどの極太線香が数本立ててある。また絵がかかっていることもある。観音像や太上老君像が多い。 戸口の両側の赤い柱に一対の聯が書かれている.例えば次のようなものだ。

恭喜発財福包家
万事如意金銀満

はなはだストレートに中国系人の願いが出ている。潮が引くと足下は泥面になる。この泥面に無数の穴があいている。良く見るとムツゴロウがいる。ここで中国系人の端唄を紹介したい。

♪♪ 水中のケモノは何でも食える、潜水艦以外は。
空飛ぶケモノは何でも食える、飛行機以外は。
四本足のケモノは何でも食える、机以外は。
二本足のケモノは何でも食える、両親以外は。♪♪

この第4句が「両親」になっていたのは昔のこと。今では「自分自身」になっているという。その中国系人でさえムツゴロウを食わないのだ。我が日本の有明海の人間はよほど勇気が有るのだろう。
帰りは、午後4時頃のフェリーボートに乗る。桟橋から例の食堂を見ると、オヤジが手を振っている。来た時と帰る時とでは、同じ水路でも幅と両岸の景色が違う。干潮なら水路は細くなり、マングローブは裸根を高く出す。満潮ならその逆になる。

本土に着く頃、日が暮れる。日は暮れるが、時間はまだ早い。マレーシアは赤道直下。いつも日本の春分のように昼夜の長さが等しいのだ。宿舎に帰り着くまで腹がもたない。行きつけのシーフード料理店に突撃する。馴染みの潮州系の店で、ハゲ頭の老板(オヤジ)と色白の小姐(ネーチャン)が揉み手をして待っている。 「いつものヤツ!」と怒鳴ると小姐がテーブルウェアーを持ってくる。スプーン、ナイフ、フォーク、箸、カナヅチ、ガラ用皿等々。カナヅチ??? なんの為に?

普通のシーフードが各種出て来た後、待ちに待った焼石蟹がドーンと出てくる。甲羅は長径が25センチほどある。爪がごつい、刀鍛冶のヤットコのよう。石蟹というだけあって、甲羅も爪もガチガチに硬い。そこでカナヅチの出番となる。全員がドンドコやりだす。この店では、どんなに大きい音でも許される。この蟹、確かに旨いのだが、いささか味がきつ過ぎる。瀬戸内海のワタリ蟹の3倍はきつい。そこでレモン汁をどっぷりかけ、さらに真っ赤なスイートチリソースをかけて食う。そこへ老板がワインクーラーならぬ大バケツに氷水を張り、瓶ビールをどっさり入れて持ってくる。再び大満足。宿舎に帰る頃には、全員が完全に出来上がっている。かくして、翌週のために精神の充電が果たされる。

**「清蒸薫魚」のレシピは次の通り。
1.魚(鯛、或いはスズキ)のウロコとハラワタをとる。
2.その魚を丸ごと大深皿の上にのせる。
3.魚の表面と腹の中に、梅干をつぶして塗りつける。
4.その上に生姜の細切をふりかける。
5.そのまた上にネギを長いまま2~3本のせる。
6.さらに清酒(ドブロクの方が良い)をタップリ振り掛ける。
深皿の底に2~3ミリ溜まるまで。
7.それを皿ごと蒸す。


公開日:
最終更新日:2016/03/22


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