貧乏エンジニア漫遊記

大手造船会社エンジニアが世界を股に掛けた、面白奮闘記です!

16.マレーシア編(3)

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マレーシア編(三)

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マレーシアの密林の夜は恐ろしい。木々が月光も星光も透さない。漆黒の闇の中を大蛙の声だけが響く。日本の食用蛙の声も深みがあるが、マレーシアのそれは、陰々滅々、九層の地獄からの呼び声のようだ。子供達は、夜の密林には悪霊が飛び交っていると信じている。その名をピーといい、赤ん坊をさらって行くという。

日本では最近、夜のお化けや幽霊は出なくなった。むしろテロや狂牛病の方が怖い。狂牛病といえば肉骨粉が連想される。肉骨粉は悪役だが、中国料理には肉骨茶(バックーテー)という鍋物がある。豚のスペアリブを数種の薬味と一緒に煮る。この鍋物に麩のような軽いパンとウーロン茶を併せた物が肉骨茶である。色はこげ茶、肉はすぐ骨よりはずれる。味は日本にはないので表現しようがない。敢えて言うなら葛根湯、肉桂、生姜、ハブ茶を混ぜた薬湯にカルビを入れたものだ。休日に肉骨茶を摂るのが、華人の粋な朝食なのである。有名店になると、毎日曜日、華人のベンツが店先に並ぶ。 私もある時期これにハマった。店のオヤジとも親しくなった。ウーロン茶の作法もここで身に付けた。
ある日、オヤジが透明なスープを持ってきた。横で老人が恍惚顔で同じ物を啜っている。人参、蓮根、セロリの茎に、サイコロ状に切った茶色の豆腐が入っている。メニューには無いものだ。無料サービスらしい。薄い塩味でサッパリしている。豆腐も塩味のオツな味がする。大豆製品ではないようだ。主人にたずねた。主人はしたり顔で福建語で答える。
「 ○×△▼!」 さっぱり分からない。主人はもどかしがって悶える。手首を切る真似までする。突然ひらめいた。血だ。この豆腐は血を固めたものに違いない。漢字の筆談で確かめた。主人は豚の血だと言う。またこのスープは上得意にしか出さない物だという。その後、日曜日になると肉骨茶と血豆腐の澄まし汁を食いに出かけた。お陰で5kgは太った。この話をマレーシアの華人の業者にすると、「お前は仲間だ!」と云う事になり、大いに仕事に役立った。
突然話は変わるが、マレーシアにはユーラシアンという言葉がある。ユーラシア大陸の人間という意味ではない。マレー人とポルトガル人の混血を言う。イギリスがマレーシアに進出して以来、ポルトガル人は撤退した。しかし混血者は行くところがない。回教徒の海の中でひっそりとキリスト教を守って生き延びてきた。当然独自の文化を育んだ。その一つに辛くて酸っぱい鍋料理がある。名前を忘れたのが残念だが、韓国のメーウンタン、タイのトムヤムクンに引けを取らない立派な料理である。鯛の頭、茄子、ほうれん草等が鍋に入っている。香辛料は唐辛子、レモングラス、タマリンド、ココナツミルクが使ってある。日本に帰って復元を試みたが、どうしても同じ物ができない。

また、マレーシアには地酒がある。トーリーと呼んでいる。回教徒ではあるが、有史以前から飲み続けており容易にやめられないらしい。早い話が椰子の実から作ったドブロクなのだ。甘口なのでジュース感覚で飲んでしまう。調子に乗って飲むと、上半身になんら異常なく頭脳明晰なのに、立とうとすると腰が抜ける。昼休みに飲むとひどい目にあう。

公開日:
最終更新日:2016/03/22


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