貧乏エンジニア漫遊記

大手造船会社エンジニアが世界を股に掛けた、面白奮闘記です!

34.米国編(3)

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貧乏エンジニア漫遊記
アメリカ編( 3 ) ユニオン、安全対策
アトランティック・シティー近くの火力発電所建設現場で、工事管理者(以下、管理者と呼ぶ)が溶接工の成績表をつけていた。ASME規格では、発電所の圧力部の十万箇所を超える溶接部全てに、一箇所毎に溶接工名と施工日時が記録される。後の抜取りX線検査で不具合が一箇所でも発見されると、その日に、その溶接工が溶接した箇所を全数検査する。管理者がつけていた成績表はその為のものかと最初は思った。しかしどうも形式が違う。「はてな?」と考えた。

「その表、変っているね。何の為のもの?」 そうたずねると、
「ユニオンに見せてやるのさ」 と管理者は答える。
「ユニオンって作業者を供給しているところ?」
「そう。ここのユニオンはボロばかり寄越して吹っかけてくる、この表見せてギャフンと言わせるのさ」 と自慢気だ。

アメリカでは、現地工事での作業者雇用方法が日本と異なる。日本では作業者は請負業者が供給する。アメリカではそれをユニオンが供給するのだ。請負業者は納期に縛られるが、ユニオンにはそれがない。

アメリカの各地域に職能別ユニオンがある。曰く、配管工ユニオン、鉄工職人ユニオン、ボイラー据付工ユニオン等々だ。このユニオンは日本で言う組合とはいささか異なる。一見クローズド・ユニオンなのだが、同じ仕事を複数のユニオン間で奪い合いをすることがある。

例えば、発電所工事。火力発電所にはボイラー・蒸気タービン間の複雑な蒸気配管がある。そこの溶接箇所は何百とある。仕事の内容は同じでも、蒸気タービンに近いか、ボイラーに近いか、配管の真ん中かで担当ユニオンが異なる。当然工事範囲をめぐってユニオン間で対立する。またユニオンはボロの溶接工にも同じ待遇を得ようし、管理者は溶接工の能力に応じて待遇しようとする。そこで管理者とユニオンの間で虚々実々のやり取りが生ずる。管理者は、工事着工前に、現場付近のユニオンの情報を得るために努力する。ユニオンはユニオンで、現場におけるアイスボックスやジュース自動販売機の配置までを、具体的に要求する。

アメリカの工事現場は、とにかくユニオンとうまくやるのが成功の鍵だ。なめられないように、反感を買わないように。

安全対策については、日本では必要以上のことをしている。日本では作業者のヘルメットのアゴ紐掛けまで厳しく要求する。アメリカで、風のない日にアゴ紐をかけている作業者は少ない。また日本では、拘束時間中でも、作業開始前に体操と5分間安全教育などをするが、アメリカではしない。どちらが良いかは一概に言えないが、規則ずくめの日本の方が煩わしい。

公開日:
最終更新日:2016/02/22


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