貧乏エンジニア漫遊記

大手造船会社エンジニアが世界を股に掛けた、面白奮闘記です!

7.中近東編(3)

管理職の求人ならリクナビNEXT

貧乏エンジニア漫遊記 
中 近 東 編 (3)

1987年1月、パキスタンのラホールに行った。インドのムガール帝国の首都だった町だ。 市場に行くと、手回しジューサーを具えた屋台があちこちにある。人参と柘榴(ざくろ)が原料だ。人参は超極太。山のように積んである。まず持参の抗生物資を飲んで人参ジュースを試す。砂糖を入れないのに、すこぶる甘くコクがある。青臭さは全くない。ここの人参は世界一だ。

柘榴も他の国のものとは違う。江戸っ子の軽口に「恐れ入りやの鬼子母神」というのがある。「恐れ入りやした」と入谷の鬼子母神とかけた言葉だ。鬼子母神には説話がある。それによると鬼子母神は子供の頭を食っていた。釈迦は、彼女を憐れみ、柘榴を与えて、その習慣を止めさせた。なぜカボチャでなく柘榴なのか。一説によると柘榴と人肉の味が似ているからだと云う。この説は間違いだ。仏教通過の地パキスタンの柘榴をみるとわかる。パキスタンの柘榴は大きい。日本の柘榴を野球のボールとすれば、パキスタンのそれはソフトボールほどだ。一方パキスタンの子供の頭は、日本の子供の頭よりずっと小さい。そして茶色だ。味ではなく、頭の形と色が似ているのでこんな説話ができたに違いない。

市場の後、ガンダーラのアソカ王の都城址に行く。草原に基礎部分だけが残っている。ゴミ捨て場だった所が掘り込まれており、地層毎に説明書きが立っている。それにはアレキサンダー時代とかグプタ王朝時代とか書いてある。世界史の縮図のような遺跡だ。今昔の感に耽っていると、子供が数人近寄ってきた。拳骨大の石の仏頭をを見せて、口々に「持出禁止の出土品だ。内緒で買ってくれ」という。勿論真っ赤な偽物だ。1ドル位に値切って土産に買った。そのままトランクに入れて忘れていたら、帰国時空港で美術品持出容疑で引っかかった。税吏は美術品だと言い張る。「そんな立派な物ならお前にくれてやる」とポンと税吏に投げてやったら、税吏はニャッと笑って通してくれた。勿論、向こうも偽物と知った上で、チップ目当てで難癖をつけただけなのだ。

さて都城址の近くに、釈迦像で有名なタキシラ考古学博物館がある。釈迦の王子時代の像、苦行中の像など日本では見られぬ彫刻がある。王子時代の像は、カイゼル髭をたくわえた堂々たる偉丈夫だ。苦行中のものは、目がくぼみ、肋骨が浮き出たリアルなもの。どうもガンダーラ人は釈迦をより人間的な身近な者として理解していたらしい。

話はかわるが、シルクロードの草原に行く度に、その一色の緑に感激する。そして、もしこれが一面花畑だったら天国と云えるだろうと夢想する。単に夢想だけだ。ところが、知人のO氏が、その夢のような世界に出会っているのだ。O氏は隣国のアフガニスタンで、野生のチュウリップの花が、大草原一面に咲き誇っている見たという。どうも平素の心がけの差が出たようだ。

公開日:
最終更新日:2016/02/22


Message