貧乏エンジニア漫遊記

大手造船会社エンジニアが世界を股に掛けた、面白奮闘記です!

9.イベリア半島編(2)

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貧乏エンジニア漫遊記
イベリア半島編(2)

(承前) スペインで本場のフラメンコを見たいと思った。ところが、それを頼むとスペイン人は皆怪訝な顔をする。あるいは一瞬不快な表情をのぞかせる。フラメンコはスペインの誇る芸術だと私は思っていたのだが、すこし事情がちがうらしい。もし日本で、外国人の若造に「芸者をみたい」といわれたら、我々は訝しく思うだろう。まさに彼らはそういう顔をしたのである。当時のスペインでは、特に造船所のある町の飲み屋では、フラメンコダンサーには高い評価を与えていなかった。日本に伝わっている外国の風俗や習慣は、その国の人の全てが誇りにしているとは限らないようだ。

ポルトガルには、リスナベという大きさではヨーロッパ有数の造船所がある。カジスでの仕事の数年後に、この町を同僚とともに訪問した。私達のはいった海辺のレストランは超庶民的だった。主人は脂っぽく煤けた店内で料理をし、客は屋外の壊れかかったテーブルでそれを食う。料理は、貝や海老のバター・ワイン蒸しだ。ポートワインは赤と相場がきまっているが、そこでは、甘辛、赤白、上中下、どんなものでもおいていた。「うまい地酒」を頼んだら辛口の白がでてきた。銘柄は忘れたが、最近はやりの言葉でいえば“腰が強くて切れの良い”ものだ。OL好みのマテウスのようなヤワな物ではない。いわば、ポルトガル版の“越の寒梅”だった。一仕事終えた後、汐風に吹かれ、大西洋に落ち行く夕日を眺めながら、山盛りの海老や貝を幾皿も平らげつつ、冷えたポートワイン一杯やるのは、思い出すだけでも唾が出てくる。。

これも同じ時の話。リスボンで記念になるものを食おうと衆議一決した。町にでると、水槽のある店がある。
「ヤヤ! あの伊勢海老は1メートルはあるゾ。髭も入れると。」値段を聞くと割勘でいける。即決。店に入って全員太閤気分で待った。こういう場合の時間は長く感じる。皆、喉を鳴らしていた。来た々々、やっと出て来た!  各自に大根のオデンの様なものがでてきた。一個づつ。一同口をアングリ開けて聞く.
「何?これ。」
店の主人はスマして答える。
「貴殿達が注文したものである。大西洋一の伊勢海老を、ゆがいて、皮をむき、輪切りにしたものである」
予想外だ。あまりにも惨めだ。1メートルの海老も、ゆがいて、頭を取り、しっぽを捨て、5~6個にぶち切ると、確かにこうなるだろう。一同、パサパサの大西洋一の伊勢海老の残骸を前に、無念の顔を見詰め合った。

ここで突然話はかわるが、海外では、現地工事の責任者をサイトマネージャーと呼ぶ。サイトマネージャーは作業の段取ばかりでなく、作業員の健康にも留意する。したがって風土病と食事・料理について自ずから詳しくなる。最近は世界中で日本人向けの食材が手に入るし、食堂請負業も発達し、悩みも減った。しかし昔は違う。飯場の限られた予算で、多くの人間に文句を言わせず物を食わせなければならない。当然古参のサイトマネージャーは、料理について一家言持つようになる。かく言う私もその類だ。私は自分の人格を他人に非難されると恥じ入るばかりだし、カラオケ歌唱力や容貌を云々されても一心に耐える。しかし料理の腕前を貶されると俄然反駁したくなるのだ。

さてここまで能書を言った後、スペインのホテルの厨房で得た知識に、私の工夫を加えたパエリャ料理法を、皆さんに伝授したい。かのザビエルのバイタリティーは何処から涌いたか。推測するに彼はパエリャを食っていたのだ。サフランさえもって歩けば、南欧から日本まで、何処ででもパエリャの材料は揃う。パエリャについて、どの料理書にも難しく書いてある。実際は「スペイン風炊き込み御飯」にすぎない。材料は下記のとおり。

1.カラ付き海老。泥水育ちのブラックタイガーやザリガニは不可、
2.貝。アサリで良い、ムール貝は駄目、公害汚染の恐れあり。
3.烏賊、その他海産物。
4.鶏ガラスープ。
5.野菜。グリンピース、ピーマン、キノコ等。菜葉者以外は可。
6.外米。
7.オリーブオイル。二番絞りでよい。
8.サフラン。極く細い針状のもの、偽物に注意。本物は超高価。
9.香辛料。唐辛子、ニンニク、塩少々。

料理法は下記の通り。
外米を洗い、サフラン入りの鶏ガラスープに浸し、大鍋で混ぜながら弱火で乾燥させる。オリーブ油にニンニクと唐辛子で香りをつける。香りが付いたらニンニクと唐辛子は取り出し捨てる。海鮮物と野菜を上記のオリーブ油で炒める。貝の殻が開きはじめたら、上記の外米と混ぜる。サフランを入れた水で炊く。皿に盛り付ける。さあ召し上がれ。

注意、パエリャ鍋は不要。炊飯器で間に合う。外米は洗うなと言うのは俗説。サフランは多すぎると味がエグくなる。

 

公開日:
最終更新日:2016/02/22


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